デリック歯科
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あなたに伝えたい


博和会 ドクターによる「あなたに伝えたい」メッセージ集です。順次公開予定です。



二十年くらい前の話です。
私はかつて総入れ歯にハマッた時期がありました。
当時は型取りから始まって噛み合わせを取り、入れ歯が出来るまでの各ステップを慎重に丁寧に行なっても結果にバラつきがあり、それを予測できませんでした。

ある患者さまは「大変具合がいいです」と喜んでくださいました。
 一方、別の患者さまには「とても口の中には入れていられない」とお叱りの言葉をいただきました。

その頃の私は“総入れ歯なんか入れてみるまで判らない”と思っていました。
しかし当時でも入れ歯の名医と言われる先生がいたことも事実です。
入れ歯作りには何か特別な職人芸とも言うべき才能が必要なのでは?と思う反面、入れ歯の不調を訴えて来院される患者さまの入れ歯を見て、「よくこんなもの口の中にいれてられるな、これじゃ噛めないのもわかる」と思っている、入れ歯にはドシロウトの若造歯医者の自分がいました。
「じゃあどうしたら噛める入れ歯が出来るのか?」と考えることもなく、自分は総入れ歯とはまったく無関係な世界にいる歯科医と思っていました。


入れ歯成功の秘訣


インプラント

あるとき70歳前後の患者さまが来院されました。
通法どおり上下の総義歯を装着しました。結果は“吉”と出ました。
その患者さまは大変喜んでくださいました。「保険でこんなに安くていいんですか?」とも言って下さいました。ここまで言われて嬉しくないわけはありません。 しかし何か心に引っかかるものがありました。それから時を同じくして別の女性の患者さまが来院されました。
同じく総義歯の方でした。

同じように慎重に上下の総義歯を装着しました。
しかし結果は?…“大凶!”

装着後、ほとんど毎日のように調整に通っていただきましたが…ある時からパッタリお見えにならなくなりました。ヘタな歯医者とアイソをつかされたのは歴然です。

それからというもの “義歯も歯科医学の一分野である以上サイエンス(科学)であり、明快な理屈があるはずだ” と思い、本を読んだりセミナーに行ったりでいわゆるハマッてしまったのです。
それから途端に面白くなり、入れ歯の患者さまが待ち遠しく感じられるほどになりました。 入れ歯

そしてわかった事、“入れ歯成功の秘訣…歯ぐきにぴったり適合した正しい噛みあわせをもった入れ歯”これだけです。 実際はもうちょっと複雑ですが、ここを抑えれば先が見える入れ歯が出来ると確信しました。

自信を持って自費で義歯を作れるようになりました。

しかし出来上がった入れ歯がどんなに適合が良く、正しい噛みあわせを持っていてもお口の中では予測できないことが起こります。 それは機能時の動き、デンチャー・モビリティーといいます。 そう、入れ歯は歯ぐき(粘膜)の上に乗っているので、咬合圧がかかると予期しない動きをするのです。
この動きを見極め、コントロールできる歯科医こそ入れ歯の名医なのです。


総入れ歯とインプラントの比較

 一方インプラントです。
まず天然歯は根の周りに歯根膜という軟組織があり、圧を受けると数十ミクロンの単位で動きます。インプラントは歯根膜がないため 「微動だにしない」という表現がぴったりです。

しかし臨床的には健康な天然歯とインプラントは同等と見て差し支えないといえます。

動かないものをコントロールすることはやさしいのです。 入れ歯
極端な表現かもしれませんが、具合の良い総入れ歯を作ることは霧の中を手探りで進むようなもので、かたやインプラントは真昼間、口笛を吹きながら両手をポケットに入れて歩ける状態といえるかもしれません。

総入れ歯もインプラントも噛みあわせをコントロールできる知識と技術が最も重要なのです。その意味では入れ歯のほうが確実に熟練を要するのです。

両者を比較すれば、機能面すなわち噛む力という点では当然インプラントに軍配です。

入れ歯 言うまでもなく、横綱がインプラント、幕下が入れ歯で勝負になりません。

しかし両者は単純に比較は出来ません。歯の欠損を補填する治療は機能回復だけが目的ではないからです。またすべての症例にインプラント治療が出来るわけでもあません。

ベンツじゃなくカローラでも十分ドライブは楽しめます。ベンツは買えても経済的理由ではなく、何らかの理由で国産車にしなければならない方も大勢います。

その何らかの理由がたくさんあるのです。

従って、やはり歯科医として入れ歯の研鑽も必要であり、またこれもとてもやりがいのあることと感じております。
はっきり申します。私はインプラント派です。歯を失った患者さまには出来るだけインプラント治療をしたいと思います。
でも入れ歯でご苦労されているご高齢のお年寄りにも具合の良い入れ歯で喜んで頂きたいと思っております。


患者さまとの信頼関係


インプラント患者さま

最近わかった事。
入れ歯を成功させるために知識・技術の熟練とは別にもっとも大切なことは患者さまとの信頼関係です。
これは義歯治療に限ったことではありません。
しかし特にご年配の患者さまを対象とする義歯治療には術前の説明と起こりうる結果について十分理解し納得していただくことが不可欠であると思っています。

歳を重ねていくにつれ、新しいものに対し順応しにくくなります。


新しい入れ歯を入れるとき、なぜ入れ歯を新調しなければならないのか、古い入れ歯とどこが違うのか、古い入れ歯のどこが不満でどう改善したいのか、新しい入れ歯に慣れるにはある程度時間がかかること、また患者さま自身の慣らせる努力が必要なことなどを十分に理解して協力して頂かねばどんなに優れた入れ歯でも結局は使えない代物になることもあるのです。

この点が入れ歯の最も難しいところであると最近になりやっとわかったのです。

ハッタリでもエラそうに「私を信じて付いてきて下さい」という態度で患者さまにお話しています。ほとんどの患者さまは私の人生の大先輩なのですが、そう思っていただかなければ光は見えないのです。

生意気で申し訳ありません。